SPMT
SPMTとはSelf-Propelled Modular Transporterの略。たくさんの車輪がついた自走式の輸送車のこと。世界各地にはいくつか代表的な重量物輸送業者があります。日本だと、日本通運や山九が代表的です。海外だとMAMMOETが代表的です。以下がMAMMOET社のSPMTの紹介動画です。これを参照させてもらい、SPMTについて紹介したいと思います。
SPMTの特徴
このように、1軸にダブルタイヤの車輪が2組(合計8輪)ついており、基本的に1台4~6軸程度がSPMT1台の構成になります。このSPMTは何台も連結できるようになっており、積み荷の重量や大きさに応じて連結数が決められます。連結数によっては最大で1万6千トンもの超重量物を輸送することができます。トヨタのランドクルーザーが大体2トンですので、もう想像もつかない重量です。
動力はディーゼルエンジンによって昇圧される油圧駆動です。各SPMTの端部にPPU(Power Pack Unit)と呼ばれる動力ユニットが取り付けられ、これによってSPMT自体が駆動します。一番大型のPPUを用いれば、一つのPPUで40 軸程度のSPMTまで動かすことができます。
デッキ(荷台)の昇降機能
SPMTの荷台は油圧で昇降できるようになっています。Mammoetの所有するタイプだと一般的に60㎝程昇降できます。従い、重量物を持ち運ぶときはこのように積み荷の下に潜り込み、荷台を上昇させて輸送物を積載します。
積み荷の下に潜り込めさえすればクレーンやフォークリフトは不要のため、積み荷の下に潜り込めるような状態で仮置きしておけば搬出の際にクレーンやフォークリフトは不要です。このように積み荷を浮かせておくための仮置き材(Cylinder Supportと呼ばれる)もMammoet社が複数所有しており、輸送物に応じて設置できます。
デッキの水平度調整機能
道路の傾きによって積み荷が崩れないように、デッキ自体が傾き、常に積み荷が水平になるような機能がついています。
段差があった場合も軸のサスペンションが稼働して常にデッキが水平になります。これはおそらく各軸にかかる荷重が監視されており、段差に乗り上げてその軸に大きな荷重がかかった場合はサスペンションが稼働して常にデッキが水平になるような仕組みになっているのではないかと想像されます。
軸だけではなく、各タイヤセットも地表面の状態に応じて柔軟に調整され、安全に積み荷が輸送できるようになっています。
車高の低い車が坂道で車体を吸ってしまいますが、SPMTでも同様の懸念があります。それなりに勾配のある坂道でPower Pack Unitが地面にすらないように、PPU自体の角度を調整する機能もあります。
SPMTの連結
SPMTは積み荷の大きさや重量に応じて複数を連結して用いることができます。各SPMTは標準化されており、側面と上部のピンで簡単に連結できるようになっています。
SPMTは進行方向だけでなく、横方向にも連結可能です。積み荷が長辺・短辺ともに大型になった場合には横方向にも連結し、輸送の安定性を確保することができます。
SPMTの必要台数の算定方法
積載物重量による算定
詳細な設計は各重量輸送業者が様々な要因によって決定しますが、見積もり等の簡易レベルだと、まずは重量によってSPMTの台数を算定することができます。
SPMTは1軸あたりの最大荷重が決まっており、MAMMOET社製の最もキャパシティが大きいSPMTの場合最大で1軸40トン程度のキャパシティになっています。輸送する積み荷の重量が400トンの場合、最低でも10軸以上の軸数=6軸のSPMTが2台必要になる、というようにSPMTの必要数を検討します。
地耐力による制約
SPMT自体が1軸40トンのキャパシティがあったとしても、輸送時に走行する路面が40トンに耐えられない場合があるため注意が必要です。コンクリートやアスファルトが敷設されていても、そもそもの地面自体が柔らかい地盤であったり、コンクリートやアスファルトそのものの厚みが薄く40トンに耐えられず割れてしまうということも考えられます。その場合は、現地の地耐力に応じてSPMTの数を増やし、1軸当たりの軸荷重を小さくして路面状況に合わせる必要があります。
輸送ルート全長にわたり40トンの地耐力を確保するのは実際のところ簡単ではないため、一般的な建設現場だと15トン~20トン前後の地耐力を確保するのが一般的だと思います。なお、大型のオルテレーンクレーン走行のためには一般的に1軸あたり12トンの地耐力が必要とされる点を鑑みると、40トンの地耐力を確保するのが簡単ではないことが想像できると思います。
SPMTの操作
SPMTはPPUに有線コントローラーを接続してオペレーターが操作します。スティックとボタンのみで操作できるようになっています。
すべてのタイヤは360°駆動できるため、真横への移動、斜めへの移動、その場での転回など、柔軟に輸送路を移動することができるようになっています。
まとめ
SPMTは重量輸送の基礎かつ重要なツールです。世界の重量輸送業者はSPMTの保有台数でその規模が測られます。大型の重量物輸送では、このような特殊機材が必要のため、どのタイミングでどこからどれだけの機材を手配していくかもプロジェクト遂行のキーポイントになると思います。
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