Mammoet社Ring Crane(リングクレーン)によるFPSOモジュール吊り上げ モジュール工法と合わせて解説

重量物輸送技術

FPSOモジュールリフティング

FPSOとはFloating Production, Storage and Offloading;浮体式生産設備の略です。日本だとMODEC社が有名です。最近だとガーナやシンガポール、ブラジルでFPSOの製作や運営をおこなっていその名ます。の通り、洋上にて原油やガスを生産、貯蔵し、出荷用の船が来たら受け渡しを行う設備です。詳細は以下のMODECのページが参考になります。

今回はFPSOの製作におけるMammet社製Ring Craneを用いたモジュールつり上げを解説します。

Module(モジュール)とは

モジュールとは、設備をモジュールと呼ばれるブロック単位に切り分けて製作したものです。モジュール同士は後で組み合わせてます。いわばレゴブロックのようなものです。このように、必要な設備をモジュール単位で切り分けて製作し、後でつなぎ合わせる手法をモジュール工法と呼びます。日本だと、日揮ホールディングスや千代田化工建設がこのような工法を採用しガスプラントを建設しています。

今回のMammoet社は、FPSOの製作の際のモジュールの組付け時の作業動画になっています。

なぜモジュール工法を使うのか

通常は資材を建設地に持っていき、そこで一から組み立てていく方法が一般的でした。しかし昨今では先進国における大型プロジェクトの場合、現地の人件費があまりにも高額のため、イチから現地で組み立てるよりもモジュールに分割して人件費の安い国で製作し、それを現地に輸送してつなぎ合わせるだけのほうが安く済む場合が出てきています。

モジュール工法を適用すると、モジュール製作地でのプロジェクト遂行とそこからの輸送、最終建設地でのモジュール連結等、工程が増えてプロジェクトの管理コストやスケジュールが増大します。モジュール工法を適用する場合はそれに見合った利益が出るのかをスケジュールの観点も含めて慎重に分析する必要があります。

FPSOの場合、船体の製作と上部設備の製作は同時に行うことができないため、上部設備はモジュール化して地上で組み立てて船体が出来上がったと同時に組み付けていく方法が一般的です。

リングクレーンによるモジュールつり上げ

リングクレーン(Ring Crane)とはMammoet社が保有する超大型クレーンの一つで、つり上げ容量は最大で2000トンにもなります。

地上にリング状の土台を設置し、その上を油圧で旋回する仕組みです。

今回の題材となるのは、Petrobras社のPETROBRAS 58というFPSOです。船自体は1991年に作られたとあるので、この動画の工事は修繕工事か何かだと思われます。すでに船のナンバープレートともいえるIMO番号が付与されており、以下のウェブサイトで今どこで運転しているかがわかります。

リングクレーンの運転席キャビンの大きさから、クレーン自体がいかに大きいかが見て取れます。

このクラスになるとクレーンのカウンターウェイトも超巨大です。リングクレーンはこのようにコンテナ型のカウンターウェイト(バラスト)を積載します。

リンガークレーンの土台です。円型のレールのようになっており、クレーンがこのトラックに沿って旋回します。

クレーンブームの構造は、大型であると点を除けば通常のクローラークレーンと同様の構造になっています。

ちょくちょく映り込んでくるQUIPの看板は、ブラジルの油井掘削会社でしょうか。(わかりません

リングクレーンのフックです。2000トン級ですので、フックもダブルです。

シャックルや連結治具も大きすぎるため、フォークリフトを使って細かい調整を行っています。これはキャタピラー社のTelehandlerという、フォーク部分が伸び縮みするタイプのフォークリフトです。日本ではあまり見かけませんが、海外では一般的です。

ワイヤスリングやシャックルを引きずってしまわないよう、フォークで支えながら慎重に引き上げていきます。これくらいのサイズになってくると、自重でスリングやシャックル等がダメージする危険性も高まります。

スプレッダービームの取り付けです。シャックルピンの取り付けも人力だと厳しいのでフォークリフトで器用に取り付けていきます。

Mammoetのコーポレートカラーである赤色に塗装されているのがおそらくMammoetが持ち込んだフォークリフトでしょう。Mammoetの自社の機材の場合は基本的に赤く塗装されています。キャタピラーのTelehandlerは現地でレンタルしたものではないでしょうか。

スプレッダービームは今回3本を組み合わせて使用されます。

介錯ロープを各シャックルに取り付けて引っ張っています。二人がかりです。

モジュール側のリフティングラグと結合していきます。

モジュールを吊り上げて慎重に船体に乗せていきます。複数のスプレッダービームを用いることでリフティングラグにかかる荷重を垂直成分だけにする役割があります。また、スプレッダービームを1本や2本だけにして斜めにスリングをかけると、そもそもモジュール本体とスリングが干渉してしまいますので、こういう場合は複数スプレッダービームを使い、スリングの位置を工夫します。

複数スプレッダービームを使うことで既存の一般的なスプレッダービームの組み合わせで柔軟にスリング位置が調整できるメリットはありますが、その分必要な高さ方向のスペースが増えてしまいますので、クレーンの巻き上げ高さも検討しておく必要があります。

介錯ロープを頑張って引っ張りつつ、モジュールを最終ポジションに持っていきます。クレーンオペレーターと現場を見る玉掛作業員のチームワークが必須です。据え付け位置についたら、あとは必要なアラインメント作業を行い、溶接されます。

まとめ

モジュールつり上げ自体はクレーンでただ吊り上げて乗せるだけのように思えますが、実際このリングクレーンのレンタル費用はひと月数千万円~1億円近くになります。モジュールの据え付け日程をいかに正確に算出し、計画的にクレーンを借りてくるかということが、プロジェクトの採算に大きくかかわってきます。やはり、Heavy Liftはプロジェクトマネジメントの重量な要素の一つだといっても過言ではないでしょう。

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